運命聖戦第三十五章_ストーリー

ララ
肌を刺すような強い魔力をこの辺から感じます…。
…ヴァンパイアを統べる存在を作り出し、現世の支配を望む『暁の魔術団』。
何かある度に、この魔術団が何か企んでいるんじゃないかと考えることが増えました。
そうですね…私の両親が目指した共存世界が王家の独裁と言われたことも気になって
それでつい考えてしまうのかもしれません…。
もちろん、そんなことはないと信じていますし、私がそれを証明してみせます!
…私がじゃなく私たち…?ふふっ、そうですね。マスターさんの言う通りです。
そのためにも、まずはこの魔力が誰かを傷付けるものじゃないかを確認しないとです!
ララ
こちらから魔力を強く感じます!…あれは、着物を着た人…?それにヴァンパイアもいます!
レイア
貴方は…聖なる血を持つ人間さん?それに、隣にいるのはララ様ね。
きちんとご挨拶したいのだけれど…っ、今は難しそうだわ…。
はぁ…せっかく力ある亡霊を求めてここまで来たのに、ハズレね。
???
………オマエ…、オマエ、…モ、憎イ…憎イ……ッ
ララ
私たちが感じた魔力はあの人から感じます!
レイア
ふふ、あの人だなんて…ララ様は面白いことを言うのね。…あれは人形よ、怨念入りのね。
ララ
怨念…おお、おばけ!?
レイア
ええ。それも、死者が残したとびきり濃い怨念を意図的に入れられているわ。
???
へぇ…。愛想良くヘラヘラしてるだけのお姫様だと思ってたけど、鋭い人をちゃんと仲間に入れているんだね。
ララ
なっ…だ、誰ですか!?それに今、意図的に怨念を入れているって…。
???
はぁ~…話に聞いていた通りキャンキャンうるさいお姫様だね。
ま、いいか。どうせ壊すつもりだし…質問に答えてあげる。
傀流
俺は壊道傀流。君たちが前に会った『暁の魔術団』に所属しているんだ。
この人形は怨念を原動力にして動くように魔術団が創っていてね、
俺も実際に使ってみたいって思っていたから借りて来たんだ。
それなのにアハトノインに比べると動きが悪くてね…。
でも殺した傍から相手の怨念を取り込んで力をつけるから、すごく効率がいいんだよ。
それに、あんな駄作みたいにうだうだ考え事しないし使い勝手は良い方かな。
ララ
…どい、です…。
レイア
ララ様…?
ララ
酷すぎます!亡くなった方の悔やみきれない気持ちを弄んで
その上、ただの道具として扱うだなんて…。
それにアハトちゃんノインちゃんも駄作なんかじゃありません…!
私たちの大切な仲間です!!
レイア
……。
傀流
あぁ…そういうの、いらないんだよね。
そういう愛し愛され、お互いを大切にすることが当たり前みたいなさぁ…。
飽きがきたもの、異質なもの、都合の悪いもの…
本人にとって不要になれば、愛情だろうが何だろうが捨てられる。それが現実だよ。
それを知らないヤツが綺麗な言葉を並べて正論を差し出しやがって…
お前らみたいなのが一番鬱陶しいんだよ…!!
……ジュダ、さっさとそいつらを黙らせろ。
ジュダ
…グ、ヴッ……ア゛ア…キエ、ロッ……アアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!
傀流
憎しみと苦しみから生まれたジュダの力を感じて、お前らの心が壊れるのがとても楽しみだよ。
ララ
ジュダと言われたあの人形は、ずっと苦しそうな声をあげていました。
私たちと戦っている時から、倒されるその瞬間まで…。
あまりにも辛そうで…救いたいと思ったのに、結局どうすることもできませんでした!!
…マスターさん…。そう、ですね…
こうして倒された今、憎しみの気持ちに囚われて戦う必要はなくなりました。
それがジュダにとっての解放になることを願うしかありません…。
レイア
な…に……?
人形に込められた怨念を通じて、亡霊が自らの意志を伝えようとしていたの…?
…っ、そんなはずないわ…!亡霊はただそこにあって、私の力になる…
今までそうだったのに、どうして…!?
ララ
…確か、レイアさんは亡霊を従える貴族でしたね…。
レイア
えぇ…。私の知る亡霊は未練に囚われているだけで意志はなく、
どこにも行けなくなった魂が私の力となるのが当たり前だったわ。
…だから、悪魔にその魂を引き渡すことにだって何の疑問も持たなかったし
ララ様の言ったような『亡くなった方の気持ち』なんて考える必要なんてなかったのに…
私は、これから亡霊をどう扱えばいいの…?
ララ
…自分の力になっていた亡霊たちが意志あるものと知って
レイアさんは酷く動揺しているようです。
今はそっとしておきましょう…。
傀流
チッ…多少は使えると思ったけど、この程度か。
戦いの最中は怨念に苛まれたイイ表情だったけど、もう元通りだし…。
まぁ、お前たちを壊すにはジュダ一体じゃ足りないってことだね。…それが分かれば十分か。
ララ
待ってください!…貴方も現世を支配したいと考えているんですか…?
以前、魔術団の幹部を名乗った方はそのようなことを口にしていました。
傀流
ハァ…そんなものに興味はないよ。
ララ
それならなぜ、魔術団に…
傀流
クク…アハハハハッ!そんなの壊すために決まってるでしょ!!
当たり前のように愛されているヤツも、愛さないクセに愛を求めるヤツも
どいつもこいつも愛に囚われて…見ていて腹が立つんだよね。
…あのクソ野郎共も、同じだったし…。
ララ
どうして…いったい何が貴方をそこまで歪めているんですか!?
傀流
逆に聞くけど、お姫様は自分が歪んでいない、絶対正しいって言いきれるの?
ララ
そ、それは……ッ、マスター…さん?
傀流
…ふぅん。君はそのお姫様を信じるって言い切るんだ。
本当にその面がムカつくけど、その真っ直ぐなところ…壊し甲斐がありそうだね。
でも、それはまた今度かな…俺はジュダの監視で疲れちゃったし、今日はさよならだよ。
それじゃあ、またね。聖なる血を持つ人間と、ヴァンパイアのお姫様。
ララ
…っ、後を追いたいですが、レイアさんを置いていくわけにもいきませんね。
それと、さっきはありがとうございました。
貴方が共存世界を肯定してくれた言葉…とても嬉しかったです。
…私は両親の夢見た共存世界を信じています。
けれど、それが歪んだ理想ではないか、誤りはないかと問われると
これまでに命を落とした方、心に傷を負った方の顔を思い出してしまって…
身がすくんで、言葉に詰まってしまいました。なさけないです…。
えっ、手を…ですか?……ふふ、貴方の手に包まれて温かいです。
そうでした…傍には貴方がいて、大勢の仲間の支えがあるんでしたね。
貴方の温もりを感じるまで、つい忘れていました…。
えぇ!?忘れないようにずっと手を繋ぐなんて…こ、子供じゃないんですよ?もうっ。
…はい。帰ったらたちに頼んで、温かいお茶を飲みましょう。
レイアさんも落ち着けるといいですね…。
???
あれが、聖なる血を持つ人間…
貴方の居場所を壊そうとする者。
よく、目に焼き付けなさい…。

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